福島原発震災情報連絡センターと「原発事故子ども・被災者支援法」推進自治体議員連盟は、8月20日、午後1時より、衆議院第二議員会館で「原発事故被災者支援施策等の改善を求める政府交渉」を行います。
国の新年度予算編成に向けて、「子ども・被災者支援法」の理念を予算措置として具体化させるための重要な交渉です。
原発立地自治体を始め全国の自治体議員でつくる、福島原発震災情報連絡センターは、原発震災で放射能汚染と被曝を強制される人々の生存権を守るため、被災者に寄り添い、いのちと健康を守るための諸活動を続けています。
政府への要請項目は、「避難者の生活・労働実態を踏まえた支援策について」「住宅の確保について」「原発事故の損害賠償について」「『福島県の子供たちを対象とする自然体験・交流活動支援事業』等について」「リアルタイム線量測定システムについて」「医療・福祉支援について」「被災者支援と事故収束、廃炉について」「支援法や指導原則に基づく支援策の運用について」「 財源確保について」などです。
福島原発事故は終わっていません。いまだ多くの被災者が、理不尽な避難生活を強いられています。
以下に、要請書を紹介します。
原発事故被災者への支援施策等の改善を求める要請書
2026年月8日20日
内閣総理大臣 高市 早苗 様
復興大臣 牧野 たかお 様
国土交通大臣 金子 恭之 様
総務大臣 林 芳正 様
文部科学大臣 松本 洋平 様
厚生労働大臣 上野 賢一郎 様
経済産業大臣 赤澤 亮正 様
環境大臣 石原 宏高 様
原子力規制委員長 山中 伸介 様
「原発事故子ども・被災者支援法」推進自治体議員連盟
福島原発震災情報連絡センター
福島原発事故から15年が経過した現在、未だ、政府の原子力緊急事態宣言は解除されていません。政府は帰還政策を押し進め、避難指示解除準備区域及び居住制限区域の避難指示をすべて解除し、現在は7市町村の一部を帰還困難区域と設定しています。しかるに政府は、ふるさとを追われた避難者の住宅支援を打ち切り、生活困窮に追い打ちをかけています。留まった住民は、除染されていない森林などからの長期低線量被曝を強いられています。家族や地域の分断も更に進んでいます。
そもそも、「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律」(以下「支援法」)は、「(被災者の)支援対象地域からの移動の支援」「移動先における住宅の確保」(法第九条)、「定期的な健康診断」「健康への影響に関する調査」(法第十三条第2項)、「子ども及び妊婦」や「その他被災者」への「医療の提供」や「費用負担の減免」(法第十三条第3項)等の施策を講ずることを定めています。しかし、当初から、政府の施策は法の趣旨の実現に遠く、被害の回復・復興の将来像も不明確なまま、具体的な支援も不十分な状況が続いています。
また、復興庁も避難者支援施策の参考として位置づけている「国内避難民に関する指導原則」(以下「指導原則」)では、「(避難民は)自国内の他の人々と同じく、国際法及び国内法の下での権利並びに自由を完全に平等に享受する」と謳われています。しかし、多くの避難者が置かれている現実は、この理念からほど遠い状況にあります。
一方で、政府は原発の「最大限活用」へと舵を切り、再稼動だけでなくリプレースも方針化しようとしています。福島原発事故が収束せず、被災者・避難者が抱えるさまざまな困難が放置されたままの「最大限活用」はきわめて遺憾です。まず被災者・避難者への支援や真の意味での「復興」への取り組みが優先されるべきです。
そこで、原発事故被災者への支援施策等の改善を求め、下記の通り、理由を添えて要請します。
1.避難者の生活・労働実態を踏まえた支援策について
①避難者の生活実態やニーズを的確に把握するとともに、適切かつきめ細かい支援策を充実させること。被災者支援総合交付金についても、多様化した避難者のニーズに対応できるよう、事業や対象の拡充を図ること。
②避難先での就労支援について、その成果と課題を具体的に明らかにするとともに、さらに効果的な就労支援策を検討・実施すること。
③避難先自治体において、原発避難者特例法で規定する範囲を超える住民サービスを適用している場合があるが、それらを国としても把握し、支援法の理念や指導原則に基づき、その支援や制度化に努めること。
(理由)
原発事故から長期間を経て、避難指定区域内外を問わず、また避難したかしないかに関わらず、被災者のニーズは多様化し、孤立や分断も進み、特に高齢となった被災者の健康や暮らしの課題も深刻化している。
被災者支援総合交付金の対象事業についても、「心のケア」「見守り」等が主な対象となっており、多様化したニーズに十分対応できているとは言えない。
また、原発事故から15年を経ても、避難先自治体によっては、避難者に対し、特例法で規定する避難元自治体や指定された事務を超えてサービスを提供している。これは、そのようなサービスを必要とする避難生活の現状があることを明確に示している。また、サービスの内容は避難元・避難先自治体の対応によっても差異があり、自治体独自の支援には限界があることや、避難者のニーズとの乖離がある可能性も示しており、国による調査や支援が必要である。
さらに、避難先自治体での住民サービスの実態や課題を把握することは、原発事故に限らず、能登半島地震への対応も含め、今後の被災者支援にも役立つはずである。
2.住宅の確保について
①法の趣旨に基づく抜本的・継続的な住宅支援制度を再構築すること。避難者の住まいに関する課題を把握し、民間住宅への家賃補助、公営住宅への入居要件の緩和を進め、そのための自治体の積極的な対応も促すこと。
(理由)
公営住宅や借り上げ住宅で暮らす避難者に対し、その明け渡しなどを求めて福島県や東京都が訴訟を起こし、最高裁で明け渡しが命じられた。また、帰還困難区域住民への借り上げ住宅提供の打ち切りなどによって住む権利を脅かされている被災者・避難者も少なくない。
そもそも、避難者は原発事故がなければ故郷から遠く離れて暮らす必要はなかった。その本質を無視し、住む権利を奪うのは、支援法や指導原則に反する対応だと言わなければならない。
2020年1月末、復興庁は都道府県の避難者支援担当部署に対し、東日本大震災の支援にあたって「国内避難民に関する指導原則」を参考にするよう事務連絡を通知しているが、福島県などの対応は、その指導原則の理念や復興庁の事務連絡の趣旨にも反している。必要なのは、深刻な生活を続ける避難者に対し、住む権利の保障と、そのための適切な支援である。国は福島県に対し、支援法や指導原則に沿った対応を強く求めるべきである。
3.原発事故の損害賠償について
①国及び原子力損害賠償紛争審査会は、東京電力に対して、同審査会の中間指針第五次追補による追加賠償対象の約148万人について、2026年5月29日現在、約137万人の支払いにとどまっていることから、賠償請求未了者への対応を含めて、速やかに支払いを完了するよう指導すること。また、追加賠償額の地域間格差の是正等について、損害の実態の広範かつ十分な調査と評価を行い、「指針」の見直しにより、公正な被害者救済に取り組むこと。
(理由)
原発事故の損害賠償は、損害賠償請求集団訴訟7件について、東京電力の損害賠償責任を認めた各控訴審判決が最高裁において確定したため、2022年12月20日、国の原子力損害賠償紛争審査会が中間指針第五次追補を決定した。東京電力は、追加対象の被害者は少なくとも約148万人、総額約3900億円とし、2026年6月3日付けの「中間指針第五次追補等を踏まえた追加賠償の対応状況」によれば、追加賠償の請求書を約142万人に発送し、約137万人から受付、支払い予定を含めて約137万人の支払いを完了したとしている。この追加賠償額は、対象区域設定や金額の基準による地域差によって被害者間の賠償格差が広がり、地域分断を生みだしており、被害者から不満の声がでている。また、2023年1月19日付け、南相馬市長並びに南相馬市議会議長による原子力損害賠償紛争審査会への「中間指針の改定等を踏まえた要望書」はじめ福島県原子力損害対策協議会、福島県市長会、全国市長会など、地方公共団体等の要望も積み上げられている。
4.「福島県の子供たちを対象とする自然体験・交流活動支援事業」等について
①福島県内を含む全国で保養活動を続けている市民グループ・NPO団体との話し合いの場を設定すること。また、保養活動を継続している団体の実態調査を実施すること。
②福島原発事故子ども・被災者支援法の2025年度予算において、福島県を窓口に実施された保養活動の自治体別の活動内容と人数、県外への活動の実績を、資料と共に示すこと。また、自然体験とセットで行われた東日本大震災・原子力災害伝承館での学習活動の詳細について説明すること。
③2011~16年と22年に、福島大学の災害心理研究所の筒井雄二教授が3歳から12歳の子供を持つ母親への調査を実施した。 (参考:3月18日 原発事故11年後も心理的影響続く 福島大教授が母子の調査 [福島県] [東日本大震災]:朝日新聞)。
記事によると、筒井教授は「こころの健康をケアする必要が続いている」と指摘している。この調査結果についてどのように評価しているか示すこと。また、福島県内の低線量被ばくで悩む保護者や児童生徒の相談窓口の現状と相談内容ついて資料で示すこと。
④県外から双葉郡などの原発事故被災地自治体に移住してきた保護者や児童生徒への低線量被ばくの健康への影響については、どのように児童生徒・保護者に情報提供しているのか示すこと。
⑤「子どもゆめ基金」において、原発事故子ども・被災者支援法に基づく研修を実施し、保養団体への助成対象を拡大し充実させること。
5.リアルタイム線量測定システムについて
①特に子どもが活動する保育所や学校、公園などに設置されたものについては、廃炉作業完了までの予算措置を確実に講ずること。
(理由)
本システムを撤去するという原子力規制委員会の方針は一時棚上げされているが、引き続き継続配置が必要である。
6.医療・福祉支援について
①見直し・廃止の方針を撤回し、医療費等の減免措置は削減前の状態に戻すこと。また、避難先・移転先でも支援を受ける権利を確保するため、各自治体の確実な対応を図るよう、周知すること。
(理由)
政府はすでに原子力災害被災地域における医療・介護保険料等の減免措置を見直し、一昨年から段階的に減免措置を縮小している。生活再建途上にある被害者にとって、医療費・介護負担等の減免措置は文字通り命綱であり、原発事故被害者に対する国の最低限の責務であり、被害者の権利である。
なお、以前も指摘した通り、知事会もこの問題について言及しており、この間、国へ提出された施策・予算要望中、「東日本大震災からの復興を早期に成し遂げるための提言」の中で、「避難指示区域等対象地域における減免措置については、令和5年度から見直しが開始されたが、対象となる住民の不安や疑問に丁寧に対応するとともに、今後、見直しが検討される帰還困難区域に居住していた住民の保険料等の減免や、市町村の保険事務等の支援について、引き続き、市町村の意向をしっかり踏まえた対応を行うこと」としている。
7.被災者支援と事故収束、廃炉について
①事故後15年を経ても、全国に分散した広域避難が継続している現状を直視し、広域避難者を法的に位置づけ、県外在住者を含めた支援制度を明確化すること。住宅、医療、就労、相談支援を分断せず、一体的に提供する枠組みを再構築すること。
②「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策」を確実に推進するため、事故の収束と廃炉に向けて、「東京電力ホールディングス(株)福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」を実態に即して見直すこと。また、事故の収束と廃炉に向けて、政府として責任ある組織の整備を図ること。
(理由)
福島原発事故から15年が経過した今も、政府の原子力緊急事態宣言は未だ解除されておらず、法の趣旨の実現には遠く、被害の回復・復興の将来像も不明確で、具体的な支援も不十分な状況が続いている。事故により、避難した人々、留まった人々、帰還した人々、それぞれの幸福追求権・生活権の回復に至る、人間としての尊厳が保障された「人間の復興」をめざすことが被災者支援の根幹である。
全国に分散した広域避難が継続している現状の中で、被災者支援の予算縮減、支援制度の縮小という政策環境の変化と制度的空白が、生活再建の遅れや支援からの排除を生み出している。
また、「中長期ロードマップ」では、燃料デブリの試験的取り出しの着手をもって、「第3期」という本格的な廃炉作業への移行としているが、東京電力は燃料デブリの本格的取り出し準備に12~15年程度を要すると表明、本格的取り出しの開始は2037年以降に大幅にずれ込む。福島第一原発の廃炉を適正かつ着実に進める「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」の更田豊志廃炉総括監も、「元々困難だと感じている。検討を進めれば進めるほど、より深刻に分かってきた」と、2051年とする廃炉の完了目標の実現のめどが立たないとしている。中長期ロードマップの見直しは必至であり、膨大な放射性廃棄物の処理や財源の問題を含めて、事故の収束と廃炉に向け、国として官民あげた総合的な責任ある組織体制を作る必要性は高まっている。
8.支援法や指導原則に基づく支援策の運用について
原発事故避難者・被災者に対する国および自治体における支援策が支援法や指導原則で求める理念や考え方に適切に基づいて行われているか、第三者も入れた検証を進めること。
(理由)
上記各項で述べた多くの課題は、国や自治体の施策・対応が支援法や指導原則に適切に基づいていない結果だと認識せざるを得ない。支援法や指導原則の原点に立ち返り、これまでの施策を再検証する必要がある。検証は適切な第三者を入れた形で進められるべきだが、国としても支援策の適切性を客観的に示すためにも意義があり、その必要性を認めない理由は見当たらないはずである。
9.財源確保について
上記事項を確実に実施・継続するため、十分な予算を確保すること。
(理由)
国は、2026年度からの5年間を「第3期復興・創生期間」として、その基本方針を決定し、課題解決の重要な期間と位置づけ、東京電力福島第一原発の事故収束作業や除染で出た土などの最終処分を進めるため、事業規模を1兆9000億円程度とした。
しかし、現状は、全国への広域避難が継続している中で、被災者支援の予算縮減、支援制度の縮小が続き、生活再建の遅れや支援からの排除を生み出しているにもかかわらず、避難者支援、医療・福祉支援、福島県の子供たちを対象とする自然体験・交流活動支援事業などへの言及がないことから、あらためて財源確保の対応を求める。
また、関連予算を内数ではなく具体的に一覧できるよう提示すべきである。
以上

2025年の原発事故被災者の支援施策の改善を求め政府交渉